地方議員選挙における多様性の時代
くもり
このたびの江田島市議選はいろいろな意味で学ばせていただいています。
これまで一市民として、日々活動していた子育て世代・現役世代の皆さんが、市民代表の市議会議員として市政に参画したいというムーブメントが巻き起こったことです。
江田島市において「地方議会の担い手不足」(→過去ブログ)と思っていたことが杞憂に終わってホッとしています。(→中国新聞2021.10.5)
子育て世代、そして、移住者とチームを組んで、その『声』を市政に繋ぐため、市民代表に選出された30歳代の次期議員も誕生しました。(→支援団体のFacebook)
一方で、『居住実態』を争点として公職選挙法第202条(→関連判例)に基づいた『議員選挙の効力に関する異議の申出』が江田島市選挙管理委員会に提出され、受理されたところです。(→市HP、プレスリリース)
近年、地方議員選挙における『被選挙権要件』(立候補する条件)について、全国的に問題(異議申し立て)となっています。このことについて調査研究した論文も見受けられます。(→地方議員選挙における被選挙権に関する一考察)
このたび異議申し出を受けた当選者は、2017年(平成29)から勤務する神奈川県庁を2021年(令和3)7月末に退職して立候補されました。
申出人の主張は、「立候補する自治体に3カ月以上の居住実態」を満たしていないことが公職選挙法第9条第2項又は第3項に反し、被選挙権がないから当選無効という論理。
一方、申し出を受けた当選者は、「家族はずっと江田島でくらしていた。いわゆる単身赴任の状態で、生活の本拠が失われたといえない。」と主張しています。
民法第22条にある住所の定義『生活の本拠』をどう判断するか、最終的に最高裁まで争う案件になるのではないでしょうか。
これまでの判例(裁判事例)や異議申し出に対応した全国の選挙管理委員会(市町村や都道府県)の事例を参考に、江田島市選挙管理委員会がどう判断するか注視しましょう。江田島市の問題ではなく、日本全体のエポック事例になると思います。
【追記】2021.11.15
江田島市HPに江田島市選挙管理委員会の異議申出に対する決定が公開されました。(→こちら)結論は、異議申出を棄却し、当選人の当選は有効との決定をしました。
民法 (住所) 第22条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。 公職選挙法 (選挙権) (被選挙権) |
このたびは被選挙権(立候補する権利)のことですが、気になることとして、出身地に住民票を置く学生さんの選挙権です。(参考→大学の寮を住所として認定した判例、下宿学生の住民票と選挙権)
これから第49回衆議院議員総選挙が始まります。よく聞くのが、「息子、娘を帰らせて投票させる。」という話。日々、学業のため、住んでいるのは広島市内であったり、関西、関東、九州等の学生が、投票のためだけ、住民票を置く「実家」に帰省して、投票することがあります。
民法第22条が定める「住所」(条文:各人の生活の本拠をその者の住所とする。)の解釈次第では、公職選挙法の「選挙権」はない、ということになる可能性もあります。
「単身赴任」そして「実家から離れて暮らす学生」、このような観点から、このたび江田島市選挙管理委員会への「異議申し出」というのは『選挙権』について考えさせられる事案です。
【参考】 「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第10次地方分権一括法)」(令和2年法律第41号、令和2年6月3日成立、令和2年6月10日公布)により公職選挙法の一部が改正され、地方議会議員選挙において、住所要件を満たさない者が当選を得られないことを承知の上で立候補する事案があったことを踏まえ、立候補の届出書に添付することになりました。
これにより、住所要件を満たさない者の立候補が抑止され、選挙事務の適正化や選挙人の混乱の回避に資するものとしています。(内閣府・地方分権改革→概要、法律、新旧対照表)
(参考)→地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律による公職選挙法の一部改正の施行について(通知)
公職選挙法改正には、2019年(令和1)の東京都区議選に原因があるのかもしれません。(参考→東洋経済ニュース、ウィキペディア)
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