中町/宇品航路の指定管理者募集について
くもり
12月17日の第11回全員協議会で執行部(企画部企画振興課)から報告のあった『中町/宇品航路』の次期5年間の指定管理者の募集が18日から始まりました。市HP(→こちら)から抜粋したものは以下の通り。
中町/宇品航路の指定管理者を募集します 現指定管理者との指定期間が令和2年9月30日で満了となるため,令和2年10月1日から5年間の江田島市旅客船設置及び管理条例で定める指定管理者を募集します。 【業務内容】 【指定期間】 【応募資格】 【募集方法】 【募集に関する質問】 【応募期間】 |
尚、このたびは市が(一財)地域公共交通総合研究所(以下、地公総研)に次期5年間(令和2年10月1日から令和7年9月30日)の航路の運航状況を見通した適切な公募条件の設定について委託し、その報告書をもとに指定管理者選定委員会が指定管理者募集要項を定めました。(→全協資料)
(一財)地域公共交通総合研究所について 江田島市が市営船を公設民営化に舵を切った時にもお世話になっている法人です。議会としては、2014年(平成26)、交通問題調査特別委員会で地公総研を訪問し、当時の『西能美航路再々編』に絡んでの視察研修にいったことがあります。(以下、過去ブログ参照) 2014年7月 9日 交通問題調査特別委員会の視察研修 2014年7月14日 視察を終えて ~公共交通~ 2014年8月 5日 市営船に関する動き 理事長の小嶋光信(両備グループ代表・CEO)の持論は「公共交通は公設民営化すべき」⇒中国新聞記事 |
1.地公総研の報告書概要(要点)
(1)経営シミュレーション
地公総研による経営シミュレーションでは、現状の便数(平日23往復便)・運賃で次期5年間を運航した場合、5年間で約2億2800万円の赤字が見込まれるため、航路維持のために何らかの手立てを講じる必要があるとの結果が出た。(人口減少等による利用者減や燃料単価の高止まり、主機関の老朽化に伴う燃費の悪化も考えられる。)
※参考過去ブログ⇒2008.2.25 船舶速度と燃料消費の関係
(単位:百万円)
R2.10-R3.9 | R3.10-R4.9 | R4.10-R5.9 | R5.10-R6.9 | R6.10-R7.9 | ||
収益 | 営業収益① | 299 | 290 | 282 | 274 | 266 |
費用 | 営業費用② | 315 | 339 | 321 | 338 | 327 |
(燃料潤滑油費) | (115) | (115) | (115) | (115) | (115) | |
(人件費) | (89) | (90) | (91) | (92) | (93) | |
経常損益(①-②) | ▲16 | ▲49 | ▲39 | ▲64 | ▲61 |
(2)持続可能性を確保するための方策(提案)
地公総研からは、次期5年間で収支均衡を図り、持続可能性を確保するための方策として以下の提案がなされています。このことを実行することで収支均衡(赤字を防ぐ)が可能との報告がなされている。
①減便を可能とする。
・現行の『平日23往復以上を確保』を※サービス基準どおり『平日20往復・日祝休日18往復以上を確保』に緩和。
⇒一航海当たりの不採算な時間帯(乗客が少ない)便を減することを可能とする。(いまは国土交通省が設定する基準以上の便数で運航している。)
※広島県内の航路における指定区間サービス基準→こちら
海上運送法第4条第6号の審査基準(サービス基準)について 海上運送法(以下「法」という。)では、船舶以外には交通機関がない区間又は船舶以外の交通機関によることが著しく不便である区間であって、当該区間に係る離島その他の地域の住民が日常生活又は社会生活を営むために必要な船舶による輸送が確保されるべき区間として関係都道府県知事の意見を聴いて国土交通大臣が「指定区間」として指定をしています。 この「指定区間」に係る一般旅客定期航路事業の許可及び当該航路に係る船舶運航計画等の変更にあたっては、法第4条第1号乃至第5号のほか、第6号の「当該指定区間に係る船舶運航計画が、当該指定区間に係る離島その他の地域の住民が日常生活又は社会生活を営むために必要な船舶による輸送を確保するために適切なものであること」の基準に適合することが必要となっています。 この法第4条第6号に係る審査の具体的基準として各「指定区間」毎に「サービス基準」が設定されています。「サービス基準」は、国土交通大臣から委任を受けた地方運輸局長が設定し、公示していますが、毎年、各県に対し意見の照会を行い、取り纏めた意見を踏まえて、必要に応じて改定を行っているところです。なお、当該基準は離島住民の生活に必要な輸送を確保する観点から、最低限維持すべき輸送サービスの水準を定めるものとなっています。 |
・現行の『午前7時台の便について、250人以上の輸送能力を確保する』を乗降実績を勘案し、『200人以上の輸送能力を確保する』に緩和する。
⇒船舶の小型化によるコスト削減。今後の市営船の更新にも小型化の案が出ています。(→R1.12.17全協資料)
②指定管理者の自主努力(自主事業)による収益向上を図る。
船舶を自主事業に投入可能な点を活かし、民間事業者の創意工夫により更なる増収を図る。
③回数券・通勤定期券の運賃改定(値上げ)を行う。
・現行の回数券及び通勤定期券の割引率が高くなっているため、他航路の水準を参考に割引率を回数券16.7%から9.1%、通勤定期券50.1%から45.0%(1か月当たり2,000円プラス)へ引き下げることにより運賃の値上げする。
・大人片道料金(980円)や通学定期など、その他の運賃は現行どおりとする。
■回数券・通勤定期券の割引率の比較
中町/宇品航路 | 小用/宇品航路 | 切串/宇品航路 | 三高/宇品航路 | |
種別 | 高速船 | 高速船 | フェリー | フェリー |
回数券 | 16.7% | 9.1% | 9.1% | 9.1% |
通勤定期 | 50.1% | 45.6% | 40.0% | 39.8% |
■中町/宇品航路の回数券・通勤定期券
回数券 | 通勤定期券 | |||
1か月 | 3か月 | 6か月 | ||
現行 | 6枚綴り4,900円 | 29,320円 | 87,960円 | 175,920円 |
改定案 | 11枚綴り9,800円 | 31,320円 | 93,960円 | 187,920円 |
2.中町/宇品航路指定管理者募集要項について(→PDF)
上記の地公総研の報告書を受けて取りまとめられた募集要項では、持続可能な航路運営を図るために前回と異なる点として次のことが盛り込まれています。
(1)回数券及び通勤定期券の運賃改定(値上げ)について
運航維持を図るため、今後、江田島市において、現行の回数券及び通勤定期券の運賃を上記の改定案とすることを検討する。料金については条例改正が必要であり、議会の議決を経て運賃改定が実施されるまでの間は、運賃改定分相当額として年間1,530 万円を江田島市から指定管理者に支払うことになります。(月割では127万5千円)
(2)管理に関する経費
管理経費については、(1)の年額1,530万円について、また、経費のほとんどを人件費と燃料費が占めており、燃料費高騰となると一気に収支が悪化します。そのため、著しく高騰する場合には指定管理者と江田島市が協議することが付記されています。
3.現行の指定管理収支について(→モニタリング評価結果)
左は市直営と平成27年10月から指定管理がスタートして3年間の中町/宇品航路の乗降客推移と収支表です。
乗客数は人口減少の影響により、年2~3%ずつ減少していることが分かります。経常収支では、市直営時代は赤字航路でしたが、指定管理制度に移行して2年間は黒字を確保しました。しかしながら3年目は、利用者減だけでなく燃料の値上がりにより1,750万円の赤字に転落。4年目の令和1年9月決算では速報値として約2,000万円の赤字見込みです。(燃料代は公設民営3年目は1年目より3000万円高くなっています。)
左は平成27年10月からの指定管理制度に移行してからの収支表で費用項目別にわかるものとなっています。
ご覧いただいたら分かりますように燃料潤滑費が上がっています。2年目は前年度比で1073万円増、3年目は1913万円増(初年度比2986万円増)となっており、このことが収支悪化に大きく影響していることがわかります。
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