交通船事業 その3
晴れ
今回は船員さんに関連する江田島市条例および規則と全日本海員組合(以下、全日海)との労働協定書について考察します。船員さんは会社別に労働組合を組織しているのではなく、いわゆる産業別組合として会社が変わっても同じ組合組織に所属します。
江田島市では、
江田島市船員の給与の種類及び基準に関する条例(以下、条例)
江田島市船員就業規則(以下、就業規則)
が制定されております。
一方で、能美町交通局の時より全日海と労働協約を締結しており、江田島市企業局となっても踏襲しております。これは大枠を中・四国集団交渉加盟会社(複数の旅客船会社で構成され、江田島市企業局も参加)と全日海が取り決めており、取り決めのない事項(例えば、ボーナスなど)は加盟会社が個別に全日海と交渉・合意します。
1)定年について
江田島市就業規則 第13条 船員の定年は満60歳とする。
労働協約 第23条 組合員の定年は55歳とし、退職年齢を58歳とする。
※市の規則が好条件となっております。
2)基本給について
江田島市就業規則と労働協約は同じ。
3)退職手当について
江田島市就業規則 第119条 退職手当の額及び支給方法等については、広島県市町村職員退職手当組合退職手当支給条例(昭和35年広島県市町村職員退職手当組合条例第1号)の適用を受ける職員の例による。
一方、労働協約による退職手当支給率は第111条に
勤務年数
5年以下の分 1年につき算定基準額の1.0カ月
5年をこえて10年以下の分 1年につき算定基準額の1.2カ月
10年をこえて15年以下の分 1年につき算定基準額の1.4カ月
15年をこえて20年以下の分 1年につき算定基準額の1.6カ月
20年をこえて25年以下の分 1年につき算定基準額の1.8カ月
25年をこえて30年以下の分 1年につき算定基準額の2.0カ月
30年をこえて定年に達するまでの分 1年につき算定基準額の1.0カ月
※算定基準額は退職手当支給時の基本給。
較すると以下のようになると思います。
江田島市就業規則 労働協約書
勤続20年 30.55月分 26月分
勤続25年 41.34月分 35月分
勤続35年 59.28月分 50月分
最高限度額 59.28月分 なし
※市の規則が好条件といえます。
4)期末手当 (いわゆるボーナス)
全日海とは個別に取り決めており、平成18年度の支給率は、4.65月分(6月 2.30月分、 12月 2.35月分)です。
ちなみに一般職員は期末手当・勤勉手当で、4.45月分(6月 2.125月分、 12月 2.325月分)となっております。
江田島市条例では、
第16条 期末手当は、年2回在籍期間に応じ、かつ企業の経営状況を考慮して支給する。
第17条 勤勉手当は、船員の勤務成績に応じ、かつ企業の経営状況を考慮して支給する。
と規定されております。
期末手当については、江田島市の条例にある【企業の経営状況を考慮】しているのかどうか、という点です。平成19年度に1億円を一般会計から補助金として投入し、また、本年度も9000万円を支援します。
船員のボーナスを削減するにしても大幅な赤字の解消にはなりませんが、企業努力と条例遵守という点からすると大いに疑問が残るところです。行政サイドからは組合との交渉がある、ということで説明しますが明らかに条例違反ではないかと考えます。
法令・労働協約と就業規則との効力関係について労働基準法は、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。行政官庁は、法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる」(第92条)と規定しています。
この条文は、労使の自主決定による労働協約が使用者の一方的作成・変更にかかる就業規則より優先することを確認し、労働協約の規範的効力の維持を図った規定といえるでしょう。
ここでいう「法令」とは、国会の議決により制定される法律、内閣や省庁が制定する政令や省令はもちろんのこと、自治体の条例なども含まれます。
法令と労働協約の関係については言及していませんが、法令がなにより最優先するのは法治国家として当然のことです(あえて根拠をしめせば民法第90条)。
したがって、優先順位は、①法令(条例も含む)、②労働協約、③就業規則、④労働契約という順序であると考えます。
【参考】
民法第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
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